100年続く老舗企業を突き動かしたのは「事業継続への不退転の決意」。クラウド会計導入でアナログ業務を脱却した水戸部製缶の経理DXプロジェクト

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1910年創業から100年以上にわたり、独自の製缶技術で事業を継承してきた水戸部製缶株式会社。時代や顧客の変化に応え、技術を磨き続けた企業は創業以来の危機に陥っていた。
同社で長らく総務部を支えてきたご担当者が定年退職をすることになり、業務の引き継ぎが急務に。しかし、属人化が進んでいた経理業務を簡単には引き継げず、後任探しは難航を極めた。総務部の田村様は該当業務の引き継ぎ先を探すなか、紙を中心とする非効率な業務フローの存在にもたびたび頭を悩ませていたという。感染症などで業務のデジタルシフトやペーパーレスが急速に進む世相に自社の状況を照らし合わせ、DXの必要性を痛感されていた。

このままでは事業継続に危機が生じると判断した田村様は、代表の水戸部様と共に経理業務のアウトソーシング、及びDXに着手。メリービズのコンサルティングサービス『メリービズ経理DX』により、紙伝票制度の廃止・属人化の解消を実現した。コア業務に集中できる環境が生まれ、生産性を向上させた同社のDX成功の秘訣は何だったのか。

全社視点で経理DXを推し進めた水戸部様・田村様に、改革成功までの軌跡を伺った。


話し手:水戸部様(代表取締役社長)、田村様(総務部 次長)
※以下、敬称略

水戸部製缶株式会社

設立年
1954年1月16日 (創業 1910年5月)
事業内容
製品製造業(菓子・海苔ほか食品・薬品向けの一般缶製造)

課題・背景

  • 担当者の定年退職。属人化・ブラックボックス化していた業務の引き継ぎに難航
  • 定常的な業務過多で経理DXに着手できず、アナログで非効率な業務フローが散見される
  • オンプレミス型会計ソフトによりリアルタイム更新・共有ができず、データ活用が不十分

解決策

  • クラウド会計システムの選定・業務プロセス変革を行い、抜本的なDX化へ舵を切る
  • アウトソーシングの導入。活用しやすい運用ルール・科目設定の地道な突合を実施
  • 現場視点の設計を徹底したクラウド会計の導入、及び導入後の活用サポートを実行

導入効果

  • 紙オペレーションから脱却。月間200枚の振替伝票の廃止に成功
  • 属人化・ブラックボックス化が解消し、安定稼働できる体制を構築
  • コア業務への集中が実現。他部門や税理士との情報共有もリアルタイムでスムーズに

きっかけは担当者の定年退職。DX対応も遅れ人手不足に拍車がかかる

──100年以上の歴史を持つ貴社が、今、経理DXに着手したきっかけを教えてください。

田村:一番のきっかけは経理担当者の定年退職でした。詳しくは『バーチャル経理アシスタント』導入インタビュー記事でお話ししていますが、長きにわたり専属で経理業務を担っていた担当者の退職をきっかけに、経理業務を継続することが難しくなってしまったのです。引き継ぎを行うにも、後任として入社した従業員が退職するなど組織としても不安定な状態で、数年の間に担当者が何度も入れ替わっていました。

──引き継ぎ後の体制が安定せず、業務を進めていくことが難しくなっていたのですね。

田村:はい。加えて、後任の育成という観点でも、改革が必要だと感じていました。長年、専任担当が独自の会計処理方法で業務を遂行していたこともあり、ブラックボックス化が進んでいたんです。しかし、コロナ禍や退職など社内外の環境変化もあり、「誰でもわかるような」マニュアルや仕組みが必要とされてきました。しかも、コロナ禍において社会全体でDXが急速に進んでいた時期です。「DX移行できない企業は取り残されてしまうのでは…。」という焦りが強くなっていたことを覚えています。

──様々な問題が表面化する一方、それに着手できるだけの安定した体制ではなかったと。

田村:そうですね。法改正・多様化する業務・DXへの遅れなど課題が山積するなかで人員不足が続いていたので、従業員の業務は増える一方でした。私自身、欠員が生じた際のフォローや新人の指導にも追われており、このままでは今後ますます業務遂行が難しくなることが予想されました。

──かなり逼迫した状況だったのですね。

田村:定常的に業務過多な状態が続いており、従業員に負荷がかかっていました。現在の業務スタイルでは、既存従業員も共倒れしかねないと危機感を覚えていましたね。危機管理の観点でも、いち早く今までの古い体質をリセットし、新しい仕組みにシフトすべきと考えるようになりました。

『バーチャル経理アシスタント』導入事例でもお話ししていますが、ちょうど人手不足を解消するために経理アウトソーシングを検討していた時期でした。そのため、今ある業務を外部委託するだけでなく、会社全体の業務を円滑にする「改革」を進めようと、メリービズさんにご相談しました。

最小限の負荷で経理DXを進めるべく、メリービズを選択

──水戸部様・田村様が中心となってアウトソーシングを進めたと伺いました。これまでのやり方を変えることについて、貴社内から反対の声が上がることはありませんでしたか。

水戸部:上層部ではアウトソーシングが初めてだったこともあり、反対を受けていました。特に情報漏洩を懸念する声が多かったですね。

田村:ただ、アウトソースをしなくては業務が回らない危機的な状況だったので、情報漏洩の論点に重点をおいて説明を重ね、アウトソーシングの必要性について理解いただきました。情報共有・守秘についてはメリービズさんからも丁寧にご説明を受けていたので、その点は私も安心してお伝えできました。「業務を楽にすること」を目的とするのではなく、「事業継続のために安定して経理業務を回していくこと」を軸にすることで、スムーズに理解してもらえたと感じています。

──アウトソース、及び経理DX推進のパートナーとしてメリービズを選んでいただいた理由を教えていただけますか。

水戸部:メリービズさんは本社が東京にあるので、通常時はオンラインでのやり取りでも、いざという時には対面も含めてしっかり対応していただけるだろうという信頼感がありました。初めてのことばかりで何もわからなかったので、必要に応じて訪問いただけるというのは導入時の安心感につながりましたね(*)。

田村:DXを進めることも視野に入れてアウトソース先を探していたので、その第一歩であるクラウド会計導入時のサポートがある点や、業務フローの構築まで行っていただける点は非常に魅力的でした。ご提案内容もシンプルでわかりやすく、上流から下流までワンストップで支援していただく見通しを持つことができました。

当社の状況を踏まえてクラウド会計の導入をご提案いただいたほか、最適なクラウドソフトの選定やマスタ移行作業、その後のフォローも行っていただけると伺い、DX推進の観点でも当社側の負荷をかなり削減できると考えました。

(*『メリービズ経理DX』ではオフィスの所在地に関わらず、ご要望に合わせて訪問でのコンサルティングも実施しております。)

ログインからつまずくことも。アナログなフローの数々がDXの障害に

──いざクラウド会計を導入するにあたって、苦労された点はありますか。

田村:業務手順が大きく変わってしまうので、当初より関係従業員からは不安の声が上がっていました。実際、クラウドシステムやオンラインコニュニケーションに慣れていない者も多く、まずクラウドシステムにログインする段階から苦戦したことをよく覚えています。

──紙やはんこを使った業務フローが多く残っていたとも伺いました。

田村:紙の振替伝票の金額を一つ一つ手で書いたり、Excelに入力したデータを印刷したり、かなりアナログなフローが多かったです。財務会計ソフトはクラウドではなくスタンドアローン(オンプレミス)だったのでそのソフトを使えるパソコンが社内に1台しかありませんでした。そのため、他の人が作業している間は自分は待たざるを得ず、自分の業務は進まないなど…「効率が悪いな」と思いながら業務にあたっていました。

運用を見据え現場目線でわかりやすい設計に。丁寧なシステム移行で経理DXの土台を構築

──運用開始までの流れを具体的に教えていただけますか。

田村:まずは「どこに、どんな情報を、どのような形で入れていくのか」を整理していきました。Google Driveに格納する証憑類は何が必要なのか種別を整理し、定型仕訳・出納帳・補助簿の洗い出しを行い、格納フォルダのツリー構造(配置構成)を考えていきました。ミスが生じないよう、当社とメリービズさんがお互いわかりやすい形を模索しました。

例えばフォルダの閲覧権限についても、本社の従業員しか閲覧できないもの・製缶工場の従業員でも見られるもの、など実態に合わせて細かく設定しました。現場の方々に使ってもらえなければ意味がないので、逐一説明せずとも運用できるような簡潔な設計にすることを心がけましたね。

また、業務の進め方や設定について、修正点は適宜メリービズさんに共有し、徐々に整合性を高めていきました。

──クラウド会計を導入するにあたって、システムの移行はどのように進めたのでしょう。

田村:freee会計への移行については、メリービズさんのコンサルタントにバックアップしていただきました。勘定科目・金額・部門・取引先など各項目において従前のソフトとの整合性が不安定でしたから、コンサルタントと一緒に突合と紐づけをしていきました。freee会計の特徴から、当社で利用していた勘定科目の名称とは違う科目があるなどもあり、慣れるのにも苦労しましたね。

当初は既存システムと新規システムを並行稼働させていたので、運用開始までの3ヶ月はひたすら現行データの数字と科目の紐づけに時間をかけました。並行稼働の終盤になるにつれ、取り込む証憑のデータ量を段階的に増やしていくなど、安定運用まで地道に進めていきました。

──水戸部様は導入から運用までの半年間をどのようにご覧になっていたのでしょう。当時の率直な心境を教えていただけますか。

水戸部:正直、苦戦している印象はありましたね。ただ一気に取り込んで業務過多になってミスが生じる、なんてことは避けたいですから。メリービズさんと密にやり取りさせていただいて、慎重に移行を進めていけたことは今後のことを考えても良かったと感じています。

田村:月次試算表や元帳の書式が変わる点についても、役員や税理士および各事業所の所属長の理解を得ながら進行していったので、結果として問題が生じることはありませんでした。

クラウド会計の活用が軌道に乗り、大幅な工数削減に成功

──『メリービズ経理DX』導入前後で生じた変化を教えてください。

田村:紙の伝票がなくなったのは大きな変化です。振替伝票で毎月200枚ほどでしょうか。以前は、私が一つ一つ起票し、その伝票をシステムに入力する、といった形でタイムラグが生じており、リアルタイムで内容を確認できませんでした。しかし、それも今では即時に見ることが可能です。

また、当初の課題であった会計データの各PC端末からの閲覧が可能となり、手元ですぐに入力・確認ができるようになっています。各事業所の帳票・仕訳・補助簿のデータもGoogle Driveに集約されているので、月次決算の資料突合も迅速になりました。修正も容易ですね。試算表を作成する時間を短縮することにもつながっています。

そして、税理士さんの月次監査も訪問形式でしたがリモート体制に変更。freee会計上の情報共有で済ませ、メール対応のみのご指摘や修正依頼内容の反映に切り替えることができました。我々はもちろん、税理士さんの時間短縮にも繋がっています。

──現場の経理業務は劇的に変わったのですね。一方、経営観点での変化はいかがでしょうか。水戸部様の視点で、感じられた変化はありますか。

水戸部:最大のメリットは、事業を継承できないリスクが軽減されたことです。冒頭で申し上げた通り、当初は危機管理体制の観点でアウトソーシングを検討していましたから。メリービズさんに支援いただいたことで、人手不足を解消できただけでなくクラウド会計の導入や業務効率化の実現にもつながりました。このような改革が、既存社員の業務過多やそれに伴う疲弊、ひいては退職を回避することにつながっていると実感しています。

デジタル活用でさらなる効率化を。コア業務に集中できる環境づくり

──最後に、メリービズに対する期待をお聞かせいただけますか。

田村:部門ごとのデータ抽出やそのデータを活用した分析が上手く機能するようになれば、とは思っています。証憑のスキャンについても、まだ負担としては残りますね。経理担当者の経理業務以外の負荷を削減できれば、もう少し精度の高い紐づけができるのではないかと言う点も。現在も業務設計は進行していますので、引き続きメリービズさんと一緒に迅速にデータ整理ができるようにしていければと思います。

水戸部:月次決算の早期化を図っていきたいです。製造業を営んでいるからには、できるだけ正確に、早く、月ごとの原価を把握したいと考えています。そういう意味で、さらなる効率化と工数削減に期待しています。決算の早期締めを課題に感じていらっしゃる企業様も多いと思いますので、様々なご支援をしているメリービズさんならではの知見をお借りしていきたいです。

田村:また、電子帳簿保存法やインボイス制度など法改正に伴う対応事項についてもご提案いただきたいと思っています。スキャンの機材など当社ではまだ整いきっていない部分も多いので、他社の担当者さんがどうやっているのかも含めて、ノウハウを共有いただけると助かります。

あとは、クラウド会計をもっと使いこなしたいという思いもあります。freee会計には予実管理などの機能があると思うのですが、まだ活用しきれておりません。予算動向などを可視化して役員陣に共有できれば、経営判断にも役立てることができますよね。日々の経理業務を効率的に回せるようになった分、財務観点での振り返りや経営判断の精度を上げていくことに時間を使っていければと思います。

──テクノロジーを活用して無駄を省き、その空いたリソースをコア業務に当てていくということですね。

田村:そうですね。経理に限らない話ですが、データを蓄積してはいるものの、未だに属人化してる業務が多いので、それを活かしきれないもどかしさを感じています。どのデータがどこに入っているか、どこに入れればいいのか、誰もが把握できるような構成にはまだなっていないのが課題です。「聞かないとわからない」というような属人化した状態を、デジタル技術の活用で解消していきたいです。

──ありがとうございました。

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