住友商事グループの品質基準と、スタートアップのスピード感を両立。急成長EV企業Hakobuneの経理組織立ち上げプロジェクトを訊く

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日本の地方都市における自動車通勤の課題に、EV(電気自動車)を活用した革新的なソリューションで挑む住友商事発のスタートアップ・株式会社Hakobune。当社は2023年4月の会社設立からわずか1年半で、主力事業である企業&従業員向けEVサブスクサービス「Hakobune」を軌道に乗せ、2024年10月にはEV(電気自動車)専用カーシェアリングサービス「Hakobune EVeryshare」を開始するなど、いま急成長中の住友商事グループのスタートアップだ。

この急成長の裏で、当社の経理組織の立ち上げにもスピード感が求められ、親会社である住友商事との連携に向けて、業務品質は落とさずに緻密な業務設計を実現する必要があったという。

この「スピード」と「業務品質」の両立のために、同社が活用したのがコンサルティングサービスである『メリービズ経理DX』、そしてアウトソーシングサービス『バーチャル経理アシスタント』だ。

グループ内にも経理・財務業務を専門とする会社があった中で、Hakobuneはなぜメリービズを選んだのか。スタートアップの事業拡大における、コンサルティング及びアウトソーシング活用の可能性とは。同社の立ち上げを担当されたコーポレート本部長の阪上孝弘氏に、お話を伺った。

株式会社Hakobune

設立年
2023年4月
事業内容
通勤用電気自動車(EV)のレンタル及びリース

課題・背景

  • 住友商事グループでも異例のスピードで企業設立。経理体制の構築が急務となる
  • 親会社との連結決算に耐えうる「品質基準」を満たす経理体制の構築が必須に
  • 事業立ち上げに即応し、業務リソース補強、システム導入を実現できるパートナーを模索

解決策

  • 経理DXコンサルティングを導入し、事業開始までの約3ヶ月間で体制構築を目指す
  • 親会社との連結を見据えた勘定科目の統一、会計システム導入など緻密な業務設計を実行
  • 経理アウトソーシング導入。毎月の繁忙期間に合わせ、経理業務を代行

導入効果

  • 連結決算を中心に、決算対応がスムーズに着地。業務品質も本社経理部から高評価
  • 会計システムの導入、活用、従業員向け説明会を短期間で実行し、迅速な運用開始を実現
  • 柔軟かつ強固な体制構築により、営業部門へ優先してリソースを投入、事業拡大に貢献

企業、従業員、脱炭素の課題を一挙に解決する「Hakobune」

――まずは、Hakobuneの事業概要について教えていただけますか。

Hakobuneは「EVを社会の電力源として広め、地域、国、地球のエネルギー問題を解決する。」というパーパスのもと、2023年4月に創業した住友商事発のスタートアップです。現在は、企業&従業員向け通勤用EVサブスクサービス「Hakobune」や、EV専用カーシェアリングサービス「Hakobune EVeryshare」を提供しています。

メインの事業である「Hakobune」は、サブスク形式で“通勤用EV” と “職場充電環境” をセットで提供する、日本初のサービスです。このサービスを利用いただくことで、企業の従業員の方に、通勤やプライベートで利用可能なEVを提供できるようになります。

――非常にユニークなサービスですね。企業のどのような課題を解決するものなのでしょうか?

都市部に住んでいる方にとって、車通勤にはあまり馴染みがないかもしれませんが、全国を見渡してみると、電車通勤よりも車通勤の方がむしろ多数派です。そして、車通勤が主流の大都市圏以外の企業は、都市部への人口流出による採用難という大きな課題に直面しています。

一方、働く人々の視点では、自動車の値段や維持費が高騰する中で、以前よりマイカーを持つのが難しくなってきています。また、近年ガソリンスタンドの廃業も多くなってきており、以前より遠くのガソリンスタンドまで行かなければならない、といったことも起きています。

こうした企業と従業員の課題を解決しつつ、通勤における脱炭素化を推進できる仕組みが、「Hakobune」なんです。

――企業、従業員、環境。まさに「三方よし」の取り組みですね!

はい。加えて、EVは「走る蓄電池」でもありますので、企業の工場や事務所に設置した太陽光発電の余剰電力を、EVのバッテリーに蓄電して運ぶことで、従業員の自宅で使ったり、災害時のBCP対策としても活用することもできます。

中には電線などのインフラが整備しにくい地域もありますが、「Hakobune」の仕組みを活用すれば、どんな場所にも電気を運ぶことができます。私たちは、この取り組みを通じて「どんな町であっても、環境に調和した便利で快適な暮らし」を実現していきたいと考えています。

――サービス開始から1年半ほどが経ったタイミングだと思いますが、どんな企業に導入されているのでしょうか。現在の状況は、いかがですか。

業種や業界の偏りというのはほとんどないのですが、やはり公共交通機関が大都市圏ほど発達していない地域の企業での導入が中心となっています。

導入台数は着実に伸びていますが、爆発的に数が伸びるというわけではありません。既に従業員のほとんどがマイカーを持っているという企業も多く、車検などのタイミングに合わせて切り替えていただくケースが多いためです。企業や従業員の方のタイミングに併せて、今後も着実に伸びていくのではないかと考えています。

「スピード」と「業務品質」、相反する2つの条件をいかに満たすか

――現在の組織の状況についても教えていただけますか。

現在、社員・派遣社員・業務委託の方を含めて30名ほどの組織となっています。創業当初は10名ほどでスタートしましたが、事業の拡大に伴って徐々に増員してきました。年齢層としては30代が中心で、比較的若い組織だと思います。

コーポレート部門は6名体制で運営しており、経理、財務、税務に加えて、法務、人事、総務、IT、広報など、幅広い業務をカバーしています。コーポレート部門の人数の少なさも弊社の組織の特徴のひとつだと思いますが、これは事業拡大期において、できるだけ多くのリソースを営業部門に投入したいという考えによるものです。

――この立ち上げと事業拡大のスピード感も、貴社の特徴ですよね。

そうですね。『独りよがりのサービスではなく、お客さまの声を聞きながらサービスを進化させていく』という考えのもと、『みかん箱でもいいから、とにかく早く開業を』というのが親会社からのリクエストでして。2023年1月に住友商事から会社承認が下り、4月には事業をスタートするという、住友商事グループの中でも珍しいほどのスピード感での立ち上げとなりました。

――バックオフィス体制の構築においても非常にスピーディーな対応が求められる中で、『メリービズ経理DX』と『バーチャル経理アシスタント』をご導入いただいたということですね。ちなみに、今回のような新会社立ち上げにおけるアウトソーシングサービスは、グループ内でも頻繁に活用されていたのでしょうか。

いえ。経理の専門スタッフを採用したり、グループ会社に業務を委託するケースはありましたが、メリービズさんのような外部のアウトソーシングサービスを活用した事例は、ほとんどないと思います。

私自身、プロジェクトメンバーに「こんなサービスがあるよ」と教えてもらうまで、メリービズさんのことを知りませんでした。最初にサービスのことを知ったときには「面白いビジネスモデルだな」という印象を受けましたね。

――どのような点に、「面白い」と感じていただけたのでしょうか?

経理業務は、月末や月初、四半期末など、特定のタイミングで忙しくなる一方で、月の中旬などは比較的業務が少なくなります。実際、以前私が経理と財務の責任者を務めていたメキシコの現地法人でも、手持ち無沙汰気味になっている経理組織のスタッフにどのように業務を割り振るかという点で、けっこう苦労したことがありました。

ですので、「忙しいときだけお力をお借りする」というメリービズさんのアウトソーシングサービスは、経理業務の特性に非常にマッチしていると感じたんです。

――グループ内にも経理・財務業務の専門会社があった中で、メリービズに興味を持っていただいたのですね。今回、連携先にメリービズをお選びいただいた決め手を教えてください。

サービス選定にあたっては、「スピード感」「業務の品質」「コスト面妥当性」の3つの観点で検討を進めていったのですが、決め手になったのは、スピード感と柔軟性の点でした。前述のグループ会社については、内情をよく知っていますし、業務の品質も申し分なかったんです。ただ、今回のような短期間で体制を構築するのは難しい状況でした。そのような中、メリービズさんに相談したところ、4月までに人員の体制の構築が可能とご返事を頂けました。また、「忙しいときにだけお力をお借りする」というアウトソーシングサービスの特性からだと思いますが、メリービスさんはコスト面においても、優位性が高いと感じました。

唯一懸念だったのは、業務品質の部分です。立ち上げのスピード感はスタートアップ水準ですが、住友商事グループの子会社である以上、厳格な品質基準が求められます。したがって、その基準を本当にクリアできるか、親会社の決算とうまく連結できるのかという部分だけが不安でした。しかし、打ち合わせをさせていただく中で、こちらの懸念事項についても非常に的確にご回答をいただき、不安を解消することができました。最終的には、安心感を持ってお願いさせていただきました。

変化の多いスタートアップだからこそ、経理組織も柔軟に変化し続ける

――コンサルティングサービスとして、会計システムの立ち上げプロジェクトにも伴走させていただきましたが、実際はどのように進みましたか?

とにかく、スケジュールがタイトでした。3月に会社を設立すると1期目の決算をしなくてはいけなくなるため、4月に入ってから法人登記や法人口座の開設を行ったのですが、その時点では精算しなければならない立替経費が積みあがっているような状況で……。なんとか4月中に社員への支払いが完了できるよう、約1週間で会計システムの設定と社員への説明を行っていただきました。

一般的なスタートアップであれば、立ち上げ期はExcelを使って計算をしたり、メールベースで承認を行うなど、ある程度柔軟な対応もできると思うのですが、弊社の場合は最初からすべてシステムで管理すると決めていたため、特に大変だったんじゃないかと思います。しかし、「できません」と言われたことは一度もなく、こちらの要望に真摯に対応していただけた点が、非常に印象的でした。

――立ち上げ期について、他に印象に残っていることなどはありますか。

他に驚いたのは、手戻りの少なさですね。まずは8割ぐらいの大まかな型をつくっていただき、残りの2割は実際に使っていく中で修正を加えていくというような形で進めていったのですが、暫定的につくったフローが無駄になるようなことは、ほとんどありませんでした。

たとえば、経費精算の設計の際には、親会社である住友商事との連携を見据えて、最初から住友商事の勘定科目コードをベースに必要な科目を整理していただいたことで、決算時の連結も非常にスムーズに進めることができました。こちらからの相談には乗っていただきつつも、常に適切なアドバイスをいただけた点は、非常に満足度の高いポイントでした。

――現在は、『メリービズ経理DX』と『バーチャル経理アシスタント』を併用してご利用いただいていますが、それぞれの運用状況はいかがでしょうか。

まず、コンサルティングの部分も残しつつ、『バーチャル経理アシスタント』を導入させていただくという柔軟な対応をしていただけた点が、非常にありがたいなと思っています。弊社のようなスタートアップの場合、事業やサービスがまだ固まりきっておらず、どんどん進化していきますので、コンサルティングを通じて、現在のHakobuneの実態に合うよう経理組織のあり方をアップデートし続けていける点は、非常によいですね。

経理業務については、住友商事の経理組織からも、「きちんとやっていただいていますね」という評価をいただいています。公認会計士の方もいらっしゃり、直近の会計ルールに則った処理をしていただけているので、大変助かっています。

新会社立ち上げ時における、メリービズの可能性とは

――今後はコーポレート部として、どのようなことに取り組んでいきたいですか?

2期目に入り、より厳格な監査基準や予実管理が求められるようになってきていますので、今後はメリービズさんと協力しながら、それらに耐えうる業務設計を進めていきたいと思います。

それから、社内メンバーの育成と教育にも力を入れていきたいと考えています。私も住友商事からの出向者で、いずれは本社に戻らなければならないタイミングが来ますので、メリービズさんに任せられる部分はさらに任せて業務コストの圧縮を進めつつ、私がいなくてもHakobuneが事業を拡大、それを支えるコーポレート部門の業務が回るような体制を構築していきたいと思います。

――近年、私たちの展開するようなサービスが、「BPaaS(Business Process as a Service)」という名称で注目されるようになってきていますが、実際にサービスを受けられてみて、このような支援形態にどのような可能性があると感じますか。

「定型業務に落とし込める作業は、システムやプロセスに落とし込む」というのは、どの会社でも今後絶対的に必要になってくることだと思いますので、需要は非常に大きいと思います。

また、同じ住友商事グループのメンバーでも、新会社立ち上げの際に「コーポレートや経理の体制をどのようにつくったらいいのか」と悩むメンバーは非常に多いです。スムーズに体制を構築できれば、その分早く事業を伸ばすことができるので、ぜひ多くの人にメリービズさんのことを知っていただき、活用してもらいたいですね。

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